生コッペパンのヒットの裏側

2023年2月28日から販売中のファミリーマートの「生コッペパン」シリーズが、発売から12日間で累計販売数500万食を突破し、好調のようだ。ファミリーマートも「パンのシリーズでこれだけ一気に売れたのは初めてのことかもしれません」と驚いているという。この現象の理由を入手できる資料を使って分析してみたいと思う。

■なぜヒットといえるか?

ファミリーマート商品本部 FF・スイーツ部上妻春香さんによると、「昨年3月のファミマ・ザ・シリーズで最も売れたクリームパンでも1000万食まで約2か月間を要しましたが、生コッペパンはシリーズとはいえ最速での1000万食が目前になっています」(※3月15日時点)。

「パンのシリーズでこれだけ一気に売れたのは初めてのことかもしれません。期待はしていたのですが、『まさかこんなに売れるとは……』が正直な感想です。何度もリピート購入していただいているお客さまがいらっしゃるので嬉しく思っています」とのことだ。

単純な比較はできないが、昨年3月に発売してヒットしたファミマ・ザ・シリーズのクリームパンをしのぐ勢いのようだ。なぜヒットにつながったのかもう少し細かくヒットの裏側を確認してみよう。

■プロダクト(製品)

「生コッペパン」は、生カヌレなど水分をたっぷりと含むしっとりとした“生”という付加価値をつけた商品がトレンドになっていることを受けて開発され、しっとり食感が特徴となっている。一方で水分をたっぷり加えて焼き上げる多加水製法と呼ばれるこの手法は、生地がやわらかくドロドロしたものになるため、機械での製造に向かず、どちらというと街のパン屋さん、ベーカリー向けの製法であるということだ。工夫したポイントとして、機械を用いた製造ができるような生地感に仕上げるため、何度も試行錯誤し、理想の発酵時間、醸成時間などを見極めてついに完成まで持っていくことができたとのこと。

今回は惣菜パン(生コッペパン たまご)と菓子パン(生コッペパン バター入りホイップ)の両方に生クリームを使用し、惣菜パンは多加水製法の生地でしっとり、菓子パンはブリオッシュ生地でくちどけがよいように仕上げたということだ。

■価格

  • コッペパン(たまご)(2月28日発売)138円税込
  • 生コッペパン(あん&バター入りホイップ)(2月28日発売)138円税込
  • 生コッペパン(焼きそば)(3月7日発売)168円税込
  • 「イチゴジャム&マーガリン」138円税込
  • 「コロッケ&ミートソース」160円税込

商品は全部で5種類。上述した製造の試行錯誤や工夫を考えると、もう少し価格帯を上げた販売でも十分に勝負できそうな気がするが、通常の総菜袋パンと比較しても、価格自体は変わらない程度の値段設定となっている。

■プロモーション

・商品開発の裏に込められた商品Vision

商品発表に登壇したエグゼクティブ・ディレクター CMO 兼 マーケティング本部長の足足立氏は、生コッペパンの開発の背景を説明した。「近年の日本の課題の一つとして、世代間の断絶がある。社名にファミリーが入っている我々としては、何か少しでも解決したいと考えてきた」とした上で、近年、コミュニケーションのきっかけとなるような誰でも知っている商品のキャンペーンを軸にしてきたと語った。ファミリーマートは、2021年春のカレーパン、メロンパンのリニューアル、2022年春のクリームパンのリニューアルに続き、今年はコッペパンに取り組んでいる。

・商品メッセージ

懐かしいのに新しい“生コッペパン”

CMにも利用されているように、顧客に伝えたい一番のメッセージこれだろう。コッペパンは学校給食の形で多くの人の記憶に残っているものの、「パサパサやボソボソ、水分を奪っていくなどのネガティブなイメージがあった」と、足立氏はその課題を指摘している。同社として、こうしたイメージの払拭を目指し、しっとりとした食感のコッペパンを開発することにしたということだ。

★生コッペパンに対する顧客のパーセプション

・従来のコッペパン→ぱさぱさボソボソのイメージ

・生コッペパン→どういうこと?やわらかいの?生触感?

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